いまや博多を代表する味覚となった「明太子」は昭和24年1月10日、十日恵比寿で賑わっていた博多の街ではじめて販売されました。<味の明太子>として博多で初めてつくり売り出した記念日です。
明太子はスケトウダラの卵(タラコ)の塩辛で、もともとは朝鮮半島に伝わる家庭の惣菜でした。これを日本人の口に合うよう味つけし、からし明太子が作り上げられました。
韓国でスケトウダラのことを「明太(ミョンテ)」といいます。日本人はこれを「メンタイ」と呼び、「タラコ」のことも同じくメンタイと呼んでいました。そこで「明太」の子だから「明太子」というわけです。
味の決め手は良い原卵と明太子に適した「唐辛子」です。これをどのように味付けするかによって明太子の辛さと旨み、風味がちがってきます。原料に加える「調味液」の調合方法や漬け込む期間等は製造各社によって異なり、もちろん秘密です。明太子はよくキムチの一種と思われているようですが、実は塩辛の一種。ちなみに韓国では「ミョンランジョッ」と
呼ばれて市場などで樽に入れられて売られており、各家庭でゴマ油やにんにくをかけて食べられています。
スケトウダラの卵は他の魚卵と同じように淡いベージュ色でトロンとしています。薄い皮膜におおわれた卵嚢の中には20万〜2百万の卵の粒が入っています。生の真子を食べても明太子のようなプチプチ感はありません。これは一粒一粒の卵を包む膜がごく薄いためです。あのプチプチ感が生まれてくるのは、生の卵嚢を温度20度程の着色塩水に漬け、1時間ごとに回転数を変えて6、7時間ゆっくりとかきまぜ、次に室温15度の部屋に一晩寝かせてなじませます。漬物の浅づけを作る要領です。塩水に漬けると、塩分が卵核に浸透して中の水分を排出します。同時に卵膜を構成するたんぱく質が変化して固くなるのです。
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