ナスは古くから栽培されている野菜で、平安時代の「本草和名」や「倭名類聚抄」に茄子の字が記され「奈須比(なすび)」と呼んでいました。他に七斑、紫瓜、茄、落酥などがあり「延喜式」には作り方も書かれています。京都七寺の盂蘭盆供養に供えたり、夏収穫したナスを「干ナス」「漬けナス」にして正月の供物にしたとあります。
原産地はインド東部で有史以前から栽培され、熱帯から温帯にかけて広がりヨーロッパへは13世紀、中国へは5世紀、日本には8世紀頃伝播したと言われています。その後風土に適した地方種が各々の地域で作り出されました。
京都は野菜のパイオニアで、都の移動に従って平安時代から種種な固有の野菜栽培を手懸けてきました。京ナスには加茂ナス、山科ナス、もぎ(一口)ナスがあり、特に加茂ナスは田楽に欠かせないものです。濃紫の丸ナスで大きな物は1キログラムにもなり、肉質が緻密です。最近は品薄のため米ナスが代用されていますが、これはヘタが緑色です。
ナスは基本的に7〜8月が旬なのですが、秋ナスは小ぶりで肉質がしまり皮がプチっと破れるのが格別の味で、「秋茄子は嫁に食わすな」の諺もあり、一説にはこんな美味しい秋ナスを嫁に食わせるのは惜しいと言う姑根性。今一つは体が冷えて子供が生めない体になる、など色々言われています。